広島県立広島工業高等学校にて
未来の建築業界を担う高校生が木造応急仮設住宅の建設を体験
東日本大震災や昨年8月の広島豪雨災害などの発生により、注目を集める応急仮設住宅。こうした背景を受けて、広島県立広島工業高校の建築クラブに所属する生徒25名が、木造仮設住宅の建設を体験した。この課外授業は広島県工務店協会の協力により実現したもの。
同校を卒業したOBの大工や棟梁も応援に駆け付け、作業が開始された。学生たちは土台まわりや柱立てなどを担当。技術面だけでなく、仕事の段取りや流れ、職人の手さばきなどを間近に感じ、授業とは一味違う現場ならではの雰囲気も味わった。簡単そうに見える作業でも、技術と経験が必要なことを実感。一方で、大変だからこそ“建物を建てる”ことへの達成感も味わっていた。完成した応急仮設住宅は学園祭で展示。学生たちは、設計士、建築士、大工などそれぞれの夢への想いを新たにしていた。
「机上とは違う貴重な経験ができた」と2年生の伊達風雅君
今回、木造応急仮設住宅の建築に参加した生徒と先生、OBの大工、棟梁。作業終了後には、みんな達成感と充実感に満ちあふれた笑顔を見せた。木造仮設住宅は翌日の学園祭で一般公開された。作業の難しさに悪戦苦闘する生徒も。手ほどきを受けながら、懸命に取り組んでOBの大工も後輩たちのために、真剣に作業。良いお手本になったようだ
建築の現場に羽ばたく生徒たちに建てる喜びや難しさを伝えたい
今回行われた、学生の木造応急仮設住宅の建築体験のきっかけを作ったのが清水先生。昨年9月に広島産業会館で開催された“ひろしま住宅・建築フェスティバル2014”に展示されていた木造応急仮設住宅を見て「学生にも建てる経験をさせてやりたいと思った」と振り返る。広島県工務店協会に相談を持ちかけたところ、協会側も快諾。今回のイベントが実現した。 「参加した建築クラブの生徒は、建築に深い興味を持っている子ばかり。卒業までに、国家技能検定2級の取得をめざしている子も大勢います。勉強だけでなく、実践を積むことで授業内容への理解度がより深まると考えました」。実際に作業を行ってみて、「頭で理解しているのとは全然違う」と話す生徒の姿も。「現場は経験が全てといっても過言ではない。学生のうちに貴重な体験をさせてあげることができてよかった」と笑みを浮かべた。
広島県立広島工業高等学校 建築科主任 教諭 清水博雄さん
授業だけでは伝えきれない現場ならではの空気を知ってほしい
2年前まで現役の大工だった沖野先生は、「今回の作業は生徒にとって本当にいい経験」と太鼓判を押す。「建築の現場は与えられた仕事だけこなしても評価されない。考えて動く自主性が大切。この経験で、技術以外の面も学ぶことが多い」と話す。生徒主体で行動する力を養うため、あえて役割分担はなし。最初は土台の周りを取り囲むように立っていた生徒たちも作業が進むに連れて、何をすべきか考え自主的に動き始めた。「現場があうんの呼吸で動いていることは教えられるものではなく、感じないとわからないこと」と笑う。 この他にも沖野先生は、大工道具を学ぶため、“広島削ろう会”に生徒と訪れ、その技や工具の手入れなどを見学させてもらうことも。「仮設住宅もそうですが、現物を見るということが高校生の彼らにとって宝物。将来現場で必ず役に立つ」と語った。
広島県立広島工業高等学校 建築科 教諭 沖野浩明さん
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