住まいの木質化を語る上で、「無垢の木」という言葉がよく使われます。ここで言う「木」は「呼吸する木」を指します。「呼吸する木」とは、木目の化粧板やプリントを使ったものではなく、自然乾燥もしくは一定の乾燥加工を経た「生きた木、素材」を指します。居間や寝室など、住む人が直接目や手に触れるところに使う木材は、こうした「呼吸する木」を採用することが理想的です。
「呼吸する木」を見分けるポイント
■冬場に歩いたり、触ったりしたときに、ひんやりしないこと。 ある程度温度が確保された居住空間で、冷たくない。
■防腐処理をしなくても持つ状態であること
■木の自然の香り
■視覚的問題、色味などの素材感(質感)
かつて日本の家作りでは、伐採、製材した木を自然乾燥させ、木の曲がりなどのクセをなおし、用途に応じた状態となった加工をしたものを使用していました。もともと「呼吸する木」はこうしてできていたのです。現在、多くの製材方法として行っている高温乾燥による急激な加工は、本来木が持っている樹液成分を揮発させ、木と木をつなぐ繊維が壊れ、木が骸骨化してしまいます。理想は38度〜40度と言われていますが、55度までの低音〜中温で乾燥させた木材なら、木の有効成分が残り、虫を寄せ付けません。800年や1000年の長い間建つ神社仏閣があるように、木そのものの力を生かせば、長寿命で強い建築材料となります。それが本当に人に優しい木。生活の中で優しさを実感できる木なのです。
「呼吸する木」の見分け方は、まず香りの良さ。木の持つ清々しい香りがあります。また素足で歩いた時、夏はひんやりと、冬でも冷たい感じがしないことがポイント。無垢材は、繊維質があり、十分な気泡・空気層があるので寒さを遮ってくれるのです。また生きた無垢の木は水を落としても水をはじきます。
人間は、その本来の存在からして、木や森と友達、あこがれがあります。元々森にいて、緑や木の中で進化した進化論的切り口です。石や木は化学物質ではない自然素材という時点で体に害のない物質として、十分理解できます。自然物ではないものに囲まれていることこそ不自然であると考えられます。