マンション感覚のワンフロアで、 戸建ての存在感もある平屋の家が、 少子高齢化や核家族化に伴い、 幅広い世代から注目されている。 その人気の理由に迫ってみた。
2階以上を持たず、階段のない平屋住宅。
駐車場を2台、家族構成にもよるが3LDKの間取りを求めたら、通常よりも広い敷地面積が必要になる。
コスト的には2階建て住宅よりも基礎が横に広がるため高くなりがち。
そうしたハードルもありながら、少子高齢化で将来は「部屋数が多い、大きな家はいらない」、年齢に伴う身体への負担から「2階は使わなくなる」という声も多く、これからの暮らし方にマッチするのが平屋のスタイルと言える。
実際に大手ハウスメーカーの調査では、50代の3割以上が平屋に住みたいと感じているアンケート結果が得られたという。
そのメリットは「ワンフロアで移動がラク」「風通しや日当たりが良さそう」「庭と家がつながる」「丈夫で安心」「目が届き、子育ても安心」「家族との距離が近い」など、多くの実感がある。
今回は広島県工務店協会の会員工務店、橋本建設がオープンさせた「平屋」のモデルハウスを訪ねてみた。
これまでは目に見えるカタチで確かめる機会が少なかった平屋の住まいを、もっと身近に体験できると早くも好評のようだ。平屋の暮らし方を、メリットと合わせ、まずはここでイメージしたい。
平屋の良さは分かっていても、 家を建てるときにどう生かせるか、 家族の思いをどう共有するか。 モデルハウスを体験しながら、 メリットを実感してみよう。
2階に家族のプライベート空間を集中させる間取りは多い。
リビングに階段を確保して、家族の顔が見えるよう配慮するプランも人気だが、平屋の住まいならワンフロアでつながりながら、自分たちのスペースを確保できる。
特に子育て家族はリビングで子どもと過ごす時間を大切にする傾向があり、平屋なら必然的にコミュニケーションが取れる空間をプランニングできる。
家族の様子が見えない2階建て住宅より、目が届きやすい平屋の選択は納得できる。
2階のない平屋は天井の高さや開口部の広さを自由に設定できる。天井の高さを最大限にすれば、吹き抜けと同じような感覚の開放性も生まれ、2階の居室を持たないことから冷暖房効果の心配もない。
2階部分の重量を検討しなくても良いので構造上大きな空間をつくることも容易。
また階段をつくるためには、ホールと合わせて4畳程度のスペースが必要。これが不要になり、居室だけでなく収納やロフト、小屋裏など遊びの空間へと活用できるのも魅力だ。
平屋の大きなメリットは、1・2階の上下移動が不要になる点にある。シンプルで動きやすい空間は、特に家事動線を短縮したい場合は最適と言えるだろう。
洗う・干す・取り込む・収納する、そうした家事の一連動作がワンフロアで対応でき、マンションの空間で過ごすような快適性を、戸建住宅にそのまま取り入れた暮らしを実現。加齢による負担が心配なシニア世代、家事効率を重視する子育て中の若い世代など、幅広い年齢層が平屋の住み良さを実感している。
2階部分の構造を考えなくても良いので間取り変更の自由度が高く、将来の家族構成や生活スタイルが変化した場合も、対応しやすいメリットがある。
例えば広い部屋を子どもが成長したとき、2つの独立した部屋に分割したり、リフォームで部屋数を減築させることも計画できる。
このように長い年月にわたって暮らし方の変化に対応できる平屋は、少子高齢化が進む日本人の住まいを考えたとき、将来の資産価値を維持していけることも見逃せない。
2階への移動がない平屋は、床をフラットにすれば完全なバリアフリー設計。
無垢の床材や漆喰、珪藻土などの自然素材の使用により、家全体の空気がどこに居ても心地良い。
ワンフロアなので、建具を開放すれば、温度のバリアフリーにもなる。
平屋は躯体の強化が容易で、重量が軽いため、地震の揺れを抑えることができる。
構造材のズレも少なく、壁紙などが破れるリスクも軽減される。災害などの非常時に避難する場合も、1階だけの空間なら簡単になる。
平屋の敷地を生かした庭とのつながりも人気の理由。
オープンな広がりを楽しめるウッドデッキは屋根を設け、平屋の外観を一層印象深いものに。
季節ごとのガーデニングをリビングで眺めるのも楽しい。天気がいい日の読書、バーベキューなどにも活躍する。
1階と2階で風の流れが途切れる間取りとは異なり、平屋は窓を開けるだけで風が全体へ行き渡る。
広い開口部を確保して、風通しのいいプランを設計しやすい。日当たりも高い天井と天窓の採用により、光の向きと量を計算。通風・採光の性能を高めている。
フラットな無垢のフローリングは普段の手入れも簡単。掃除機がけの負担もバリアフリーで軽減され、人気のロボット掃除機に任せることで、毎日の掃除もラクラク。
最近はロボット掃除機に合わせた設計や家具配置も多く、1階だけのメリットは大きい。
2階のない平屋は外壁塗装などの修繕時に、足場などを組む必要が少なく、メンテナンスのコスト負担が大きく軽減できる。
もちろん平屋部分だけで完了するため、作業量や日数も減らせ、コストを大幅に抑えることができ、資産・譲渡価値の維持も容易だ。
家族の成長や独立などに合わせて、 暮らし方も大きく変わる。 平屋は家族の思いを描くキャンバス。 未来を見据えた可変設計で、 オーダーメードな間取りに応える。
Plan1:30代4人家族[子ども2人が小学校〜高校生の場合]
子育て世代にとって、2階や階段などの死角が少ない平屋の家は、賢い選択の1つ。
広い多目的空間をプランしておけば、子どもが成長したときに間仕切りもでき、独立した部屋を確保したいときに便利。
キッチンと水回りの家事動線を最短にしたり、収納の数を多く設けたりするなど、将来に備えられるのも平屋ならではの魅力。
Plan2:40代3人家族[子ども1人が独立した場合]
子どもが独立して不要になったスペースを取り込み、収納場所を増やしたり、ゆとりのLDKを間取りの中心にしたりすることも可能。
多くのゲストを招いて多目的に過ごせる空間、残る家族が使うプライベートな居室をほど良い距離で確保。
広いワンフロアだからこそ、家族構成の変化に応じた空間の可変性を発揮させることができる。
Plan3:50代2人家族[子どもが独立してご夫婦2人の場合]
階段の移動がない平屋は高齢のご夫婦でも暮らしやすい。子どもが独立して不要になったスペースは、家族それぞれの趣味を楽しむ場所に。
また両親と同居する2世帯のスタイルでも、お互い体への負担を少なく、それぞれの生活空間を広いワンフロアの距離で確保でき、プライベートもキープ。
平屋の家はこれからのスタンダードになる。
木と自然素材の優しさを取り入れた平屋は、 これからの理想にふさわしい住まい方。 経験とこだわりが生む平屋の施工実例7棟を紹介。
しおた工務店
安芸高田市 M様邸
広さよりも機能的な平屋を希望したM様。必要なものにすぐ手が届くよう、住みやすさを重視した工夫を凝らしている。
手持ちの家具や家電が納められるよう、間取りの随所に便利な造作棚を設置。床はワックスがけが不要なチークの突板フローリングを選択し、手入れや掃除が容易になるよう配慮した。
職人技が光る土間とリビングを仕切る格子戸は上品な和の趣で、町家のような風情が漂う玄関回りに仕上がっている。暮らしやすさを満喫できる平屋だ。
IKEHOUSE
広島市東区 S様邸
ご主人が仕事で何度か訪れたことのあるイタリア・トスカーナの煉瓦の家をモチーフにしているS様邸。
シックな木目仕上げのドアや、鮮やかなオレンジ色の洋瓦が、どれも重厚感のある煉瓦積みの家を引き立てる。間取りは1階にLDK、2階は寝室のみといったご夫婦2人の暮らしに合わせたシンプルなもの。
この家を「終の住処」と考えるS様夫婦にぴったりの、永く住める煉瓦積みの家が完成した。
永本建設株式会社
大竹市玖波 K様邸
日本の伝統的な工法、大工の手刻みで建てられる木の家を希望したK様。
大人のご夫婦がこれからの人生を楽しむため、浴室、トイレ、寝室に広さを確保。またキッチンも料理好きのご主人に合わせて広めに設計。
ゆとりのパントリーも便利さを実感させる。リビングの天井は木材のたくましい組み手を見せるようにした。家のどこを眺めても上質感が漂う。大人の暮らし方を叶えた平屋のお手本だ。
しおた工務店
安芸高田市八千代町 F様邸
集合住宅に住んでいたF様ご夫婦は、もともとワンフロアの生活スタイルに満足、平屋を最初から希望していた。
完成した平屋は繊細で風格のある和の佇まいを見せ、四季の彩りを楽しめる環境と調和。
間取りにも和室とLDKを結ぶ渡り廊下、庭と自然の風景を眺められる窓、テーブルの高さや配線の収まりにもこだわった空間のすっきりとした広がりなど、要所に平屋のメリットを感じさせる。木と自然素材の安らぎも伝わってくる。
しおた工務店
安芸高田市吉田町 K様邸
もともと建築やインテリアに興味があったK様は、平屋にしたい、趣味の小部屋やガレージが欲しい、自然素材とタイルを使いたいなど、住まいへの希望も明確だった。
外観も緑豊かな田園風景を背景に、さりげなく和テイストが漂うモダンな家が完成。平屋の広さを生かした20畳のLDKには、洗練されたオールステンレスのキッチンなど、こだわりのアイテムがそろう。
小上がりの和室、趣味の書斎など、多彩な暮らし方にも応えている。
高橋工務店株式会社
呉市焼山 O様邸
古き良き日本建築の良さに、現代的な住みやすさを合わせ持つO様の家。
和風が好きなご主人、洋風派の奥様、それぞれのテイストを融合させている。掘りごたつ式の座卓を設けたLDKは、座卓に座る家族と目線がそろうよう、キッチンの床を少し下げている設計を採用。
家族の絆を強く結びたい希望が叶えられたと好評だ。高気密、高断熱、高耐震構造を実現した次世代技術・スーパーウォール工法も、家族が中心の住まいを支える。
橋本建設株式会社
広島市東区 I様邸
シンプルかつ暮らしやすさを追求した木づくりのI様邸。屋根は耐久性に優れた石州瓦を採用。
外部にスロープを設置するなど、バリアフリーを考慮している。内部床は厚さ30㎜のスギ浮づくり材、内部壁は高千穂シラスの「薩摩中霧島壁」を使用。
無垢の木とシラス壁の調湿、消臭作用で、清々しい空気が保たれている。リビングから庭を眺められるよう、掃出し窓を1間半幅の大きなものに。庭の心地良さを日々の暮らしに取り込んだ、理想の平屋が完成した。