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住まいに心地良さと意匠性を与える 自然素材

家づくりに取り入れることができる さまざまな自然素材。
天然の素材は空間を心地良くしてくれ、 その自然な風合いは意匠性も高めてくれます。
今回は、塗料と壁紙、たたき、 すべて広島県内の企業が展開している 3つの自然素材をご紹介します。

 

自然塗料 いろは
アールジェイ株式会社

日本の気候風土に合った 誠実で美しい自然塗料

 

長年、木造建築を手掛ける工務店などに向けて、木の保護材を提供してきたアールジェイ株式会社。
約15年前に、住宅のシックハウス症候群や環境問題がクローズアップされてきたのを機に、人に優しい素材で塗料をつくれないかと自社で研究がはじまった。
ドイツ製の自然塗料は普及していたが、日本の気候に合ったもので、耐久力、対候性を持ち、そして見た目に美しい色の塗料をとの思いで、試行錯誤の末に誕生した自然塗料が「いろは」だ。
色を付ける顔料には、日本の住宅に昔から用いられていた「ベンガラ」を採用。一般的に弁柄色はくすんだ赤茶をイメージすると思うが、ベンガラは製造過程の焼き方によって色味を調整できる。

「いろは」は、ベンガラから生まれた赤・茶・黄・黒系統の色味で、日本の風景に似合う落ち着いた色彩展開を持ち、木造のさまざまなシーンに意匠性を与えてくれる。
また、ベンガラは微粒子なので、木に浸透して着色の力が強い。いったん木に着色すると、紫外線から木の表面を守ってくれ、経年劣化も抑えてくれるのだ。木に皮膜をつくらずに優しく浸透するため、木の呼吸を妨げず、調湿作用が働き結露を防ぎ、室内の空気を快適に保ってくれる優しい素材。
「いろは」には、日本の木造建築、そこに住まう人たちへ心と体の心地良さを提供する、そんな実直な思いが込められている。

 

植物油である桐油や亜麻仁油、天然樹脂のロジン(松脂)、蜜ろう などの厳選した天然成分を配合。色味もさまざまに展開されている

 

同社がこだわったことの一つに「一回塗り」がある。
抜群の着色力に加えて塗料の伸びも良いので、一回で塗ることができ(屋外は二回塗り)作業効率もアップ。
また、撥水性にも優れている

 

アールジェイ株式会社
〒732-0055 広島県広島市東区東蟹屋町6-5
TEL 082-261-9411

 

 

壁紙 紙布(しふ)
津島織物製造株式会社

130年の歴史を持つ織物工場で自然素材「紙布」が紡がれる

「紙布」とはその名の通り、紙で織られた布のこと。現在、日本で年間10万m以上の紙布を製造できる会社は2社。1社は静岡県にあり、もう1社が江田島市にある津島織物製造株式会社だ。
同社の歴史は長く、設立は明治23年。設立当初は木綿を織り、時代の流れとともに、ふすま紙や帽帯などさまざまなものをつくってきた。現在に続く「紙布壁紙」の製造を本格的に開始したのは昭和35年からになる。
同社で織られている紙布壁紙は「呼吸する壁紙」と呼ばれており、天然の紙からできているので通気性、吸湿性に優れている。そのため紙布壁紙を張った室内は結露しにくくなるという。
その他にも、汚れが目立ちにくく、壁に張った継ぎ目部分の劣化が少ないなどの特徴を持ち、使い込むほどに味わい深く経年変化を楽しめる。
紙布を織る織機は自社で特別に改良したものを使用。織機は基本的には綿を織るためのものしかなく、それだと速度が速すぎて合わない。そこで長年の経験を生かして紙布を織るのに適した機械へと改良するのだ。
寒い季節や梅雨の時期には糸の状態が硬かったり柔らかかったりと織りにくいため、職人の経験と勘がものをいう。織りやすい時期は梅雨明けから10月くらいまでのほんの数カ月。

紙布壁紙という機能性、意匠性に優れた自然素材をつくり出す、貴重な技術を大切にしていきたい。

 

独自に改良した織機で丁寧に織っていく。自社で型紙(パンチカード)を作成してさまざまなデザインを手掛ける

 

色合いや表情、デザインの違う紙布壁紙ができる。製品の最終チェックは人の目で丁寧に行い、より良い品質を確保



津島織物製造株式会社
〒737-2301 広島県江田島市能美町中町2267-2
TEL 0823-45-2626 ※工場見学可能(要予約)

 

玄関・土間 三和土(たたき)
有限会社東邦産業社 

昔から日本に伝わる 土を使った工法「三和土」

玄関や犬走りなどに用いられる「三和土(たたき)」。その表記は材料である「土・石灰・にがり」から来ていると言われ、3つの材料に水を加え、たたきしめて(転圧して)仕上げる工法だ。
石灰が主原料である三和土。石灰は空気中の炭酸ガスを吸ってゆっくりと固くなる性質を持つので、施工後の養生が1週間ほど必要となってくる。100年くらい前まではよく用いられてきたが、近年では、化学反応によって早く固くなるモルタルやタイル工法などに変わりつつある。
しかし、石灰の中には漆喰のような防湿作用や殺菌作用もあると言われており、施工後の室内空間にもたらす性能面での効果が見直されつつある。
素材も施工方法も素朴な三和土だが、それゆえ「土」と「配合」の見極めが重要になってくる。安佐北区可部にある有限会社東邦産業社は、全国各地から土に関する依頼や相談がある“土のスペシャリスト”。
同社では、三和土に向く土を長年の感覚で判断するという。配合も長年の経験で、その土地と用途、仕上がりの風合いに合わせて調合。土選びと配合さえ的確に行えば、その段階でほぼ間違いない三和土が仕上がるという。
また、人や地球環境に対する「優しさ」、施工や補修などに柔軟に対応できる「柔しさ」、身近で簡単に手に入る材料である「易しさ」の3つの“やさしさ”が土にはあると考えている。

 

昔は左官職人自らが材料を配合して三和土を作っていたという。現在は後継者の育成にも懸念を持ち、力を入れている

 

「土」を身近に感じてもらおうと、子どもたちを対象に行っている「光るどろ団子」のイベント。キットを買って自宅でも楽しめる

 

有限会社東邦産業社

〒731-0221 広島県広島市安佐北区可部9-5-10
TEL 082-818-2333

 

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