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大切な住まいを守るには強固な地盤から~地盤調査・地盤改良の話~

住まいの夢を描くときに思い浮かぶのは、広いリビング、憧れのキッチン……。
目に見えるところばかりに考えもいきがちだが、家はそれを支える地盤があればこそ。
見えない地面の下「地盤」をもっと知り、理解することが、 安心して住み続ける家づくりの成功には欠かせない。

 

家を建てる前に 地盤を知ろう

夢のマイホーム建築にあたって、設計プランや設備、インテリアのことなど、考えることはたくさんある。しかし、土地に関しては「立地」や「学区」を気にしても「地盤」を気にする人は少ないのでは。
たとえ立派な家が完成しても、それを支える地盤が軟弱な場合、暮らしはじめてから家が傾いたり、地盤が沈下するなど、大きなトラブルを引き起こす可能性も。近年では地震に伴う土地の液状化も問題となっている。そうしたときの修繕には、予期しない費用や時間が必要となり、住まいの資産価値も下げることになりかねない。これらの事態を避けるために、まずはその土地がどんな地盤なのかを知る必要がある。
そこで、家を建てる前に大切な工程として、「地盤調査」があるのだ。

 

地盤調査は必要?

広島県内は平野部が乏しく、斜面が宅地開発され、河川に分断された軟弱な地盤も多い。地盤調査をせずに「安全」と言い切れる土地はなかなかないが、一部を除き、地盤調査をしてその土地の状態を把握し、正しく地盤改良を行えば「安全」が保証される。  
住宅の品質確保に伴う法律により、引き渡し10年以内に瑕疵(かし)が生じた場合、その修繕費用を補償する瑕疵担保保険に加入するのが一般的。保険加入には地盤調査が必要となることから、法律で義務付けられてはいないが、家を建てる前には地盤調査を実施することがほとんどだ。  
それが結果的に、私たちの家を守ることに繋がっているのだ。 

地盤調査の費用

スウェーデン式 サウンディング試験 (5カ所調査)の場合 5万円前後

地盤調査の方法
戸建て住宅のほとんどが「スウェーデン式サウンディング試験」

一般的に多くの地盤調査に採用される方法は、スウェーデン式サウンディング試験と呼ばれるもので、先端部がスクリュー状の棒を回転させ、地面に貫入して調査する。100㎏の重りを付けて25㎝進むのに要した回転数を計測していく。住宅の基礎地盤に必要な深さの地層について、貫入時の音や感触も分析、判定されるため分かりやすい。半日程度の時間で済み、コストが安いメリットもある。

画像提供 新日本建設株式会社

地盤改良はどんな 工事をするの?

地盤調査を行い、改良が必要だと判断された場合の施工方法は大きく分けて3パターンある。
①「表層改良工法」。深さ2mほど土を掘りながらセメント系固化材を入れて、土と混ぜ合わせることで地盤を強固にする方法だ。
②「柱状改良工法」。表層改良工法で強度を出すのが難しい地盤の場合、柱状のセメントを土の中でつくり、その柱で建物を支える。
③「鋼管杭工法」。小口径の鋼管を地盤に挿入し、家屋の二重を支持させる工法だ。  
ではどの工法を採用するのか。調査会社が結果を基に、適切な工法を工務店へ提案するので、基本的には地盤改良においては窓口となる工務店を信頼して手順を踏んでいけば問題はない。施主として、少しでも地盤調査・地盤改良の知識があると、納得の度合いと安心感が違ってくるのでは。

地盤改良の費用

工法の種類によって差はあるが 基本的には100万円前後

資金計画の際にあらかじめ予算を組み込んでいる工務店もある。
そうでない場合は、施主側で上記の金額を意識しておこう。

地盤改良、代表的な3つの工法

①表層改良

建物の下の地盤にセメントを混ぜて地盤を固める方法

 ②柱状改良

柱状のセメントを土の中でつくり、その柱で建物を支える方法

③鋼管杭工法

小口径の鋼管を多数打ち込むことで、地盤を固めて支える方法

長年にわたり培った経験と技術力 最適な工法で安全と安心を提供

出雲建設株式会社

出雲建設は創業1966年以来、長年にわたって培ってきた 経験と技術力を地盤調査・地盤改良の現場で発揮。
施主が長きにわたり安全に安心して暮らしていける地盤を提案し続けている。

地盤調査

自社のデータベースと ロケーションから事前調査

昭和50年代以前、戸建て住宅は地盤調査を行わずに建てるのが当たり前だったという。
しかし、土地が不足し新たに造成しはじめたので、地盤の調査が必要だと大手ハウスメーカーが取り入れた。その当時、地盤調査を行う会社は各県に1社あるかないかというほど少なかった。
同社はそれよりも早くから地盤調査に取り組んでいたため、その蓄積された経験値と技術力は業界内では他にない貴重なものである。  
戸建て住宅の地盤調査には「スウェーデン式サウンディング試験」を用いることがほとんどだが、機械による地盤調査以前にも踏むべき工程がある。
それは、その土地の成り立ちや現在のロケーションを見たり、近隣データを読み解くことだ。
同社が過去数十万件にわたり地盤調査を行ってきた結果が、自社開発のデータベースに収められており、調査対象の住所を入れるとその周りの土地はどんな地質だったか、どんな補強を行ったかなど、詳細なデータが分かるという。
技師たちは事前にそれらを調べ、その土地の予習をして地盤調査を行う。
機械による数値は正確なものだが、さまざまな要素が混ざった複雑な地盤に対しては、蓄積された過去の経験値を加味することで、より正しい地盤の状態を導き出してくれる。

土から読み解く 技師の経験値もかなめ

コストパフォーマンスの良いスウェーデン式サウンディング試験だが、「土」を採取することはないので、正確な土質判定まではできない。
そこで、機械を挿入するときの音やドリルの先に付いた土からある程度の土質を判断する。  
粘土の上に盛土などをして土地を造成した場合、盛土の荷重を粘土が受けて、土と土の間の水が徐々に排水されて「地盤の沈下」が起こる可能性がある。このような先々の状況も予測するために、土を読み取る必要がある。

土の状態の読み取り方

土はおおまかに粘土か砂に分けられ、粘土は水を含むので“悪さをしがち”。粘土を見極めることが重要なポイント

地盤改良

結果に基づいて一番安全で経済的な工法を提案

地盤改良に用いられる工法を大きく分けると「支持杭」と「摩擦杭」がある。  
支持杭は固い支持層まで杭を打ち、そこで支える工法で、具体的には「小口径鋼管杭」がある。摩擦杭は杭周面の摩擦力で建物の重さを支える工法で、具体的には「湿式柱状改良」と同社では木を使った「環境パイル工法」を採用している。  
このように、さまざまな方法がある中で「改良方法としてこれが一番優れている」というものはない。地盤改良は調査から分かった地盤の状況に応じて最適なものを導き出して行うもの。調査結果に基づいて一番安全を確保してくれ、なおかつ経済的であるか、この「地盤の状態」「安全性」「経済的」のバランスが取れた工法が一番優れていると言える。  
同社はもともと鋼管杭の施工からはじまった。鋼管杭は支持層で支えるため、地盤沈下や災害などに強く、確実に家を支えてくれる。しかし、数多く現場に携わる中で、支持層が深く、そこまで鉄の杭を打つのは予算的に不可能な場合や海の近くで海水の影響が懸念される場合など、鋼管杭に不向きな土地があることに気付き、どんな地盤に対しても対応できるよう、セメント系や木系を使った工法も採用するなど、その対応力はどんどん広がりを見せている。  
地盤改良は予算が掛かるもの。施主は家のことに気持ちがいきがちだが、必要なことを正しく提案することが自分たちの役割だと同社は考えている。

地盤の状態はさまざま 改良の工法もそれに対応して多数ある

支持杭

小口径鋼管杭

軟弱層が比較的厚い場合。また、有機質土などで地盤改良が困難だったり高い擁壁(ようへき)のすぐそばに建てる場合などに、小口径鋼管を地盤内の支持層まで打設して、建物荷重の支持杭として利用するもの。

自社開発のミニオーガー(杭打機)で狭小地でも施工可能

 

摩擦杭
環境パイル

AQ認証(優良木質建材等認証)取得をしている工場で加圧注入木材保存処理をした【木材】を、円形状又はテーパー状に加工、専用重機で地盤へ無回転圧入、これを地盤補強材として利用する工法。

(財)日本建築総合試験所による建築技術性能証明を取得

 

湿式柱状改良
特殊な攪拌翼で掘削しながらセメント系固化材を注入し、土とセメント系固化材を混合攪拌・固化させることにより、地面の中に強度の高い円筒形の柱状体をつくる工法。支持層が比較的深い軟弱地盤に対し行われる。

土とセメント系固化材を攪拌し、柱状に地盤を固化させる

 

Column

地盤に合わせた適切な工法が もしものときにわが家と命を守る

豪雨災害では、家の下の土が流される事例が発生している(上写真参照)。
大量の雨により地盤が緩んだことにより流されたのだが、この家の場合は支持層までしっかりと鋼管杭が打たれており、適切な地盤改良が行われていたので家が流されることはなかった。
地盤改良が必要となったとき、費用は掛かってしまうが、適切な施工がわが家と家族の命を守ってくれることをしっかりと踏まえておきたい。

調査結果を踏まえたトータル提案 安心とコストの両立を第一に考慮

新日本建設株式会社

地盤調査で得たデータから、さまざまな解決の可能性を導き出す新日本建設。 安心して暮らせる家。最善のコスト効果。その理想的なバランスを追求する提案で、 施工・設計会社との信頼を築き続ける。

地盤調査

調査数値だけでなく現場にも着目 地形や地図から地盤の状況を読む

広島県内は平地が少なく、山を切り崩した造成地や埋め立てによる砂地も多い傾向にある。特に崖や斜面が崩れるのを防ぐ擁壁(ようへき)がある土地はもちろん、道路や地盤面との高低差をなくすため、盛土や埋め戻し土が使われている土地も多く見られ、地盤も通常より弱くなっている。  
それらは調査試験の前から、現地の地形図や古い地図を見れば把握でき、数値やデータと合わせながら評価していく必要がある。盛土や埋め戻し土がある場合、土の状態や厚さ・締まり具合と経過年数にも着目、さらに安全性を考慮して分析。古い地図を見ると以前は沼だった場所もあり、現在の評価に問題が少なくても注意は必要だ。  
見た目だけでは判断できない盛土や埋め戻し土も、経験を積んだプロの目でしっかりと見分ける。地形図や現場写真を報告書にも添付して、説得力のある地盤調査ができるよう心掛けていると言う。

※盛土……道路より低い土地などに人工的に土を新たに盛り、地盤全体と道路面の高低差をなくすこと。
※埋め戻し土……地面より下がった所に土を入れ地盤面の高低差をなくすこと。

盛土・埋め戻し土の状況

盛土や埋め戻し土は、自然に蓄積した土に比べると経過年数が浅く収縮しやすい地盤で、主に次のような特徴がある。
①同じ締まり具合であれば、新しいほど収縮する量は大きくなる。
②良質な土でよく締め固められた土ほど収縮する量は小さくなる。
③盛土や埋め戻し土が行われた時期や厚さが異なると、沈下する量に違いが生じ不同沈下を起こしやすい。 よって、盛土、埋め戻し土の状態、厚さ、造成後の経過年数に着目して安全性の確認を行う。

地盤改良

土地に合わせたコストバランス 工事から地盤保証まで幅広い提案

一般的な改良工事には、浅い軟弱層なら建物と同面積の表層をセメントで固める表層改良の工法、中間層までの支持力が必要なら地盤とセメントミルクを混合攪拌させて柱状の改良体をつくる柱状改良の工法、そして鋼管を深い支持層まで打ち込む(小口径鋼管杭)工法がある。同社では土地の状況に合わせ、複数の工法から選択。通常は高価とされる鋼管も本数が少なくて済むなら、他の工法よりコストが下がる場合もあり、きめこまかい計算のもとで高い技術力を発揮するようにしていると言う。  
また改良工事をせず、保証会社が地盤の安全性を評価する選択も、同社は積極的に採用。改良工事を施工する場合に比べ、コストを大きく下げる要望にも対応している。  
さらに性能証明の交付を受けた特殊工法も数多く、地盤や周辺環境に合った地盤改良の工事を提供。安全と低コストの理想的なバランスを実現できるよう、技術革新にも取り組み続けている。

独自形状の掘削装置で 高品質で安定した補強を提供

地盤を特殊な形状のドリルを持つ「ウルトラピラー工法」で掘削、摩擦により耐力を向上させながらセメントを流し込み、従来は土とセメントを攪拌させて柱状の支持杭をつくり出していた工法がさらに進化。  
混合させずにセメントのみの摩擦杭で支持するため、品質の安定性も飛躍的に高めた同社の工法が注目されている。  
しかも掘削した土は側方に押し付けられて孔壁も安定、残土をほとんど発生させず処理費用を抑え、環境にも優しいのが大きなメリットと評価されている。

Column

改良工事が不要でコストを低減 地盤品質保証という選択

地盤調査の結果、地盤改良が必要となったとき、第三者機関の地盤保証会社が地盤品質の安全性を認める場合、保証料で改良工事をしない「地盤品質保証」という制度がある。新日本建設では大手優良保証会社と契約、地盤品質保証の需要に応えている。地盤の不具合が生じても、施工会社と施主に補修工事の負担がないのはメリットだろう。
保証会社の数が増え、会社によっては問題となるケースもあるので、信用・実績のある保証会社を選び、安全とコストを両立させる提案を行う必要がある。

データを過信せず現場重視の調査 砕石を使う改良で資産価値も維持

ハイスピードコーポレーション株式会社

地盤だけでなく、土地の地形や環境も判断しながら、 鋼管やセメント杭を使わない独自の工法を提案するハイスピードコーポレーション。 液状化対策の啓蒙など、強みを生かす取り組みにも積極的だ。

地盤調査

数値だけでなく土地の成り立ちにも着目 第三者機関に委ねて公平な判断を

一般的な調査方法である「スウェーデン式サウンディング」は機械搬入が小規模で済むので、道路が狭い広島の地域性にもあっている。  
調査は、機械から得られた数値や結果だけでなく、土地の成り立ちも重視し、以前はどういう土地だったのかも調べる。広島は埋め立て地や造成地が多く、地盤は弱い地域性があり、盛土や切り土などで固められた土地も、データ上では悪くない結果になるため、土地の成り立ちから判断するのも必要だ。例えば以前の土地が水田だと地盤も弱いイメージがあるが、実際は時間の経過とともに地盤の質などが変化することも多く、データ的に問題がない判断も出してしまうことがあると言う。

昔から長く家が建っていた土地は地盤が強い。昔の人はそこに家を建てても大丈夫か、周りの環境を見ながら経験的に知ってきた。地名にもそれは伝えられ、水や泥という言葉が使われてきた。しかし、あるときを境に、地名が変わっていることもあるので、現在の地名とは異なるときは要注意だと言う。  
また、調査会社として公平性を確保するため、第三者機関の保証会社にデータの評価を任せる。近年は豪雨災害の影響から、崖下の地盤は建築条件も厳しい。地盤調査は災害に対しての安心を判断するものではなく、建物の傾きや沈下の可能性がないか、その強度を判断するもの。データを過信しない総合的な判断、一般的な正しい理解が不可欠だ。

砂地盤の広島こそ液状化対策

液状化とは地震で地下水が上昇、地盤の砂と水が混じり合う状態を言う。広島は地震が少なく、土地の液状化に対する意識も高くない現状にある。しかし、粘土の場合は液状化しないが、砂の地盤は液状化しやすく、広島県は広島市内を中心に砂地が多い地域なので注意が必要だ。自治体のハザードマップでもそのことが公表されている。  
高度な液状化判定を行うためには、土壌を採取しなければならないが、一般的な地盤調査(スウェーデン式サウンディング)はそこまでできない。地盤調査の技術も発達した現在では、低コストで地盤調査と土壌採取を可能にする機械が開発され、同社でも、日本初の調査方法として注目されている「S・S・Jサンプラー」と言う、作業効率の向上や低コストも実現した技術を持っている。
通常は土の採取にボーリング作業が必要だったが、それに代わる技術だ。液状化への意識と対策は、広島に家を建てるなら重要視されてもいいだろう。

東日本大震災で首都圏において大きな被害をもたらしたのは「液状化」。
沿岸の埋め立て地だけでなく内陸部でも数多く発生し、住宅地に被害がでた

地盤改良

天然砕石を使う環境に優しい選択 地盤の強さと資産価値を守る工法

同社は、ハイスピード工法と呼ばれる天然砕石パイル工法が強み。一般的に地盤改良で打ち込む支持杭は、鋼管やセメントが多い。天然砕石パイル工法は固化剤などが必要なく、自然の天然砕石だけを使う石柱状の支持構造。地盤が本来持ち続ける強さを生かしながら、環境に優しい時代に合った工法と言えるだろう。自然砕石の石柱は埋蔵物と評価されないため、土地を転売する際など、鋼管やセメント柱のように掘り出して処理をする必要がない。掘り出すコストをかけずに放置する選択もあるが、それでは土地の資産価値が落ちてしまう。同社の工法ならそうした問題が発生しないのも大きなメリットだ。  
CO2や有害物質などの心配もないので、環境に配慮した低炭素住宅が増えている中、地盤改良も安心・安全なもので行うことができ、液状化や地震の衝撃に強い特徴も併せ持っている。  
災害はいつどこで起こるか分からないからこそ、さまざまな工法を選択肢として知っておきたい。

Column

地盤の問題は大きな環境問題 家や暮らし方の意識に影響も

地盤の強弱だけでなく、地盤改良の方法によっては、知らないうちに環境へ負荷を与えているようだ。例えばセメントを使う場合は、人や環境に有害な物質を発生させる可能性があるという。
法律の改正により、こうした有害・汚染物質の浄化義務は、土地所有者にあると定められている。天然砕石100%の場合は温暖化の原因となるCO2の発生も少なく、セメントを使わないため有害物質も発生しない。
環境に問題がある土地は、その評価も目減りしてしまう。環境配慮に関心を持つ施工会社や施主なら、地盤にもこだわりを持ちたいところだ。

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