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1本の木を植える活動が

豊かな山と瀬戸内海を育てるために

1本の木を植える活動が地域と世代をつなぐ

 

200人の手によって600本のヒノキを植樹

朝からあいにくの雨となった2015年11月中旬。尾道市北部に位置する御調町の山林で、植樹祭が行われた。主催は「『豊かな森・川・海づくり』植樹祭実行委員会」。森林や川、海のための取り組みを行う複数の団体による共同主催で、今年で10回目を迎える。今回はHJC(広島県協同組合連絡協議会)の設立30周年の記念行事も兼ねていた。 悪天候の中、それでもレインコートと長靴姿で駆けつけた親子連れやグループなど、参加者は約200人。あらかじめ指定された1800㎡の敷地に13本、時に激しい雨に見舞われながら約600本ものヒノキが植えられた。

 

 

 

 

広島県森林組合連合会 代表理事会長 佐々木 徹氏

 

 

尾三地方森林組合の職員によって、植樹の方法や注意点がデモンストレーションされた

 

2030センチほど地面を掘り、根がしっかり土に埋まるように植えるのがコツ

 

植え方の説明を受けた参加者は、5つの班に分かれて斜面を登っていく。作業が進むに従い、小さな苗が行儀よく並び始めた

 

 

次世代につなぐ緑のバトン

一般社団法人広島県工務店協会は、地域型住宅ブランド化事業および地域型住宅グリーン化事業の採択条件として住宅1棟につき50本の苗木を広島県森林組合連合会を通して植える取り組みをしています。地域の木材でつくる住まいを、次世代の環境保護につなげていきたいと考えています。

 

 

「『豊かな森・川・海づくり』植樹祭実行委員会」とは、広島県森林組合連合会、広島県内水面漁業協同組合連合会、尾三地方森林組合など5つの団体からなるもの。広島県で海、川、山を管理する団体がこの場で一同に会した。 今回植樹を行った森林は、建築用材となる良質のアカマツやヒノキが育ち、松茸の産地としても知られる地域。近隣は芦田川、御調川、その支流の山田川に恵まれ、そこにはウナギやアユが育つ。そしてその川は瀬戸内海に注がれ、ノリやカタクチイワシ、鯛やカニなどを育む私たちの大切な海域となっている。 瀬戸内海のような閉鎖性海域では、川の水の影響を大きく受ける。カキやカタクチイワシなどはプランクトンによって育つのだが、植物プランクトンは、川の水に含まれるケイ酸や、リン、窒素など栄養塩を多く含む海水で育つ。栄養を多く含んだ川の水は山から湧き出る水。山は広葉樹の落ち葉が腐葉土となり針葉樹を育て、広葉樹と針葉樹がバランスよく茂る。きちんと人の手によって間伐された山にはたっぷりの光と水が染み渡り、豊かな水を蓄える。つまり豊かな瀬戸内海は、豊かな山と両者をつなぐ川によって成り立つのだ。海と川、山の恵みが循環しなければ、自然の豊かさは成り立たない。「その豊さは将来にわたって維持されるべきであり、それを守り育てるのは環境保全に向けた私たちの不断の努力が必要です」と開会のあいさつをした佐々木会長。 続いて尾三地方森林組合の小川代表理事組合長は、「今日の天気はあいにくの雨ですが、山にとっては恵みの雨。緑豊かな山林に再生するため、向こう100年にわたって植林、保育、除伐、間伐などの森林整備が必要です」とあいさつをした。

 

 

尾三地方森林組合 代表理事組合長 小川 健太郎氏

 

 

 

 

親と子が一緒に取り組むことも植樹祭の意義。子どもたちの山や地元への愛情が増すことを願う

 

この日植えられたヒノキは2年目の苗木。これから長い時間を経て大木へと育っていく

 

子どもたちの参加に大きな意義

開会式の後、職員によって植樹の方法とコツが楽しく実演され、いよいよ植樹。参加者はあらかじめ目印の付けられた場所に向かって斜面を登っていく。小さな子どもたちは、保護者の手を借りながら、慣れないツルハシを持ち、楽しそうに植えていく姿が見られた。 「ヒノキが1本の木として育成するには約50年かかります。現在10歳の子どもが植えた苗木が育つ頃には、その子は60歳になるということです。植樹を体験した子どもたちは、この山に自分の植えた木が育っていること、育った木が自分の故郷の山や川や海を守っていることを意識しながら大人になっていくんです。自然環境を学ぶ上でこんなに素晴らしい経験はないのではないでしょうか」と話す佐々木会長。 植樹をすることは単に自然環境を整えることだけでなく、参加者の自然に対する意識をより一層強める大切な役割もある。これから地元に生き、地元を守っていく子どもたちにとって、この植樹祭の意義があるのだ、と会長は話していた。

 

植樹作業の流れ

1.表土が出るまで地被物を除く

落ち葉や小枝など、地面を覆っているものを取り除く。周囲の安全を確認し、クワで植えるための穴を2030センチ掘る。

 

2.植穴を掘り、足場を作る

掘った土を山の斜面の下側に積み上げ、クワの背でたたき、平らな面を作る。なるべく広い足場を確保する。

 

 

3.ヒノキを植え、覆土を被せる

苗木の根を広げて置き穴の上方から土を崩してかぶせる。苗木の上をつまみ左右に小さく揺すりながら、苗の位置を決める。

 

4.枯葉などを被せ、踏み固める

土をかぶせ、乾燥を防ぐために枯れ葉などをかぶせ、足で踏み固めて平らにする。踏み固めることで根腐りを防ぐ。

 

 

 

 

 

山への愛情を深め、豊かな自然環境を作る

 

雨で足元が悪い中、互いに手を貸しあいながら、それでも楽しそうに植樹に取り組む参加者

 

地元の人の協力を得て、鮎の塩焼きや焼き芋が参加者に振る舞われた

 

 

[開催] 20151114日(土)尾道市御調町 高平分収造林地 

[実施主体] 「豊かな森・川・ 海づくり」植樹祭実行委員会 広島県森林組合連合会 広島県内水面漁業協同組合連合会 尾三地方森林組合 広島県水源林造林協議会 国立研究開発法人森林総合研究所 

[協賛] 広島県工務店協会・広島県協同組合連絡協議会(HJC

 

この活動を全国に広げ、住まいにもっと国産ヒノキを

会場の一角には、地元の人たちによって鮎の塩焼きや焼き芋などの温かい食べ物が用意され、雨で冷えきった参加者を笑顔でもてなしていた。こうした地元の人との交流も貴重な機会。 「子どもへのよい機会と思い、参加しました」と小学生の子どもを連れたお母さんと「難しかったけど面白かった」という子どもたち。この山の緑は自分の手によって育っていると日々感じながら、山と一緒に成長していくこと、そして植樹によって地元の山や海を豊かにしていること……。彼らが大人になったとき、とても意義のある植樹祭に参加できたことを感じるだろう。 腐りにくくシロアリに強いため耐久性に優れ、香りもいいヒノキ。住宅建材にも使われ、1軒の家で使用した木材の約2030%を占めるという。ただ現在では、輸入に頼ることが多いのが現状。 こうした取り組みが全国に広がり、荒れた山に豊かな緑が戻ることを願いたい。そして次の世代には地元の木材をふんだんに使った住宅が日本中に広がることも。

 

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