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地域工務店によるリノベーション座談会で見えてきたのは”家守り”としての覚悟と責任

ニーズの高まりを見せるリノベーション。
今回の座談会は住宅性能の向上という視点から語ってもらう。

リノベーションを手掛ける会社は さまざまである。
地域工務店だからこそリノベーションに携わるべき必要性を強く感じた。

 株式会社池芳工務店 代表取締役 池田 芳史氏
旭ホームズ株式会社 代表取締役 末岡 京子氏
旭ホームズ株式会社 営業課長 名藤 健治氏
橋本建設株式会社 代表取締役 橋本 英俊氏
しおた工務店 代表取締役 塩田 崇氏
株式会社大喜 代表取締役 柿田 勝司氏


 

地震に対する備え「耐震補強」の 意識が低い広島県

編集部 リノベーションでは、間取り変更やキッチン・浴室など、住宅設備の取り替えを行うことはもちろんですが、地震が来たときの備えとして「耐震補強」や寒さ・結露を軽減させるための「断熱改修」といった住宅性能を向上させるための施工も行われています。その辺りに関心を持っているお施主様は、どれだけいらっしゃいますか?
塩田 広島県内では地震に対しての意識が低いのが現状で「地震がきたら、きたときのことよ」という考えの方が多いような気がします。なので、リノベーションの際に耐震性能に関心をお持ちのお施主様は少数というのが現状ですね。もちろん、絶対に耐震補強をして欲しいと依頼してくださるお施主様も中にはいらっしゃいますが。
池田 リノベーション全体の件数で言ったら、耐震補強を行った件数はわずかでしょうね。地震に対する備えって“保険”のようなものだと思うんです。いつ病気になるか分からないけど「なったときのために保険に入っておこう」と思うか、「自分はそんな大きな病気にならないだろう」と思って保険料は無駄と考えて入らないか。地震も起こるかどうか分からないですからね。
塩田 お施主様の価値観によりますよね。

 

性能向上リノベーションは 予算と相談しながら対応

柿田 お施主様の意識は低いですが、リノベーションをさせてもらう際には依頼されなくても、耐震診断をできるだけするようにしています。診断結果をお伝えして、耐震補強が必要な数値が出た場合でも、家全体をされる方と、一部だけの方。大丈夫だろうとやらない方もいらっしゃいます。工務店側からすると家全体に対して耐震補強を行うのが理想ですが、やはりそこには予算的な問題が出てきます。そこで滞在時間が長い部屋や寝室だけをしっかり補強して、万が一、他の部分が倒壊しても“シェルター”の役割を担ってくれるようにします。こうして限られた予算の中で最大限お客様の不安を払拭できるような提案を行っています。
池田 家全体での補強になると大掛かりなものになってしまうので、「そこまではいいです」っておっしゃるお施主様が多いです。工務店が見て、ここは補強が必要だと思うときには、ピンポイントで「ここには柱をいれましょう」とか、「筋交いをいれて補強しましょう」という臨機応変な提案をさせてもらっています。
橋本 耐震補強をやった方がいいのは確かですけど、お施主様のご予算と相談しながら、その中で最善の提案ができるのが、家づくりのことを熟知している工務店の強みだと思います。

 

リノベの満足度を決めるのは 住宅知識に裏付けされた提案力

末岡 つい最近、当社で担当させていただいたお施主様ですが、リノベーションするにあたって、さまざまなリフォーム会社さんやハウスメーカーさんを回られたそうです。そのお施主様は、ご両親と住んだ思い出深いわが家を残したいとの思いで施工会社を探していらっしゃったのですが、耐震性能の問題から、みな一様に「壊して建て替えた方がいい」とか、「収益物件にした方がいい」と提案してきたそうです。「耐震改修をして家を残しましょう」と提案したのは当社だけだったそうです。
名藤 既存の家を壊して建て替えた方が、耐震改修をするよりも施工が容易です。他社さんは自分たちが“やりやすい”方法をお客様に提案したのだと思います。
末岡 当社が耐震補強をするプランを提案したところ、「何社も回って初めてです。わが家を残す方法はもうないのかと思っていました」とお施主様にすごく喜んでいただけました。
柿田 耐震補強が必要な状態である家だとか、そういう改修方法があるということに気づいてないお客様もいらっしゃるということですよね。
名藤 他にも、中古物件を購入されてリノベーションされた若い子育て世代のお施主様がいらっしゃったんですが、当社以外の会社さんも同時に営業されていました。その中古物件の内見に行った際に床下を確認したり、鉄筋探査機を当てて調査をした結果を基に耐震、断熱改修のプランを立てて、実際の劣化の現状を踏まえた施工計画、資金計画も立ててお施主様に提案しました。すると、他社の営業担当者の方は、そういった知識を持っていない方だったので、当社のことをすごく信頼していただけました。
末岡 そのお施主様は当初新築をご希望で、奥様は可愛らしい家が理想だったのですが予算的に難しく、中古リノベでもデザイン面で納得していただけるよう提案しました。室内は奥様のイメージ通りにつくらせていただき、大変喜んでいただけました。限られた予算の中で、新築では難しいこともリノベーションなら実現できる良さがあります。

 

家の状態を正しく把握するのは 地域の“家守り”としての責任

橋本 増改築を重ねる度に、見積金額の1番安い会社に施工をお願いして、複数の会社が関わっている家は注意が必要です。空間を広げるために抜いた柱が、本来なら抜いてはいけない柱だったり、補強を全くせずに2階の柱を乗っけている場合も見たことがあります。僕らは、空間を広げるために弱くなるリノベーションはしません。イメージ優先で既存の家の構造が弱くなるリノベーションはしないのです。地域に根ざして家づくりをしている工務店は“家守り”としての責任がありますから。
柿田 それと、リノベーションを進めていく中で壁をはぐってみて悪いところがあれば、それを見て見ぬふりをしてお施主様に伝えないということは絶対にしません。その欠陥や劣化に気付くのも、住宅知識に富んだ工務店だからこそだと思います。

 

予算や状態に応じて 適材適所の対応力を発揮

編集部 断熱改修の場合はどうでしょうか?
橋本 断熱改修の場合も耐震補強と一緒で、家全体を断熱改修しようと思うと、それなりの費用が必要です。壁に新たに断熱材を入れ替えると大掛かりですが、床下や天井に断熱材を入れるだけで断熱性能が格段に上がる家も多いです。
名藤 築年数の経っている家で、天井も床下も断熱材が入っていない家は多いです。
池田 あとは窓ですよね。熱の出入りが多い窓は家の断熱性能を高めるために大事なポイントです。リノベーションの際に間取り変更などを含むのであれば、窓の位置を変えたところには断熱性能の高い樹脂サッシでガラスはペアガラスを入れています。予算的な問題でサッシ自体の変更が難しければ、内窓を入れて対応します。断熱改修に関しても、その家の状況と予算に応じて提案の方法はさまざまあるんですよ。
塩田 断熱改修に関しても、工務店の知識と技術力で適材適所にその家の状況と予算に応じた提案をさせてもらうことができます。
池田 そうですね。工務店だったらその場その場で現状を見て、その家とお施主様の状況に合わせた細かい提案をさせてもらうことができます。
名藤 性能向上系のリノベーションであれば、新築も手掛けている工務店の方が圧倒的に対応力があると言われています。普段から、耐震性能、断熱性能のことを勉強して新築で経験を積んでいるので、リノベーションになった際もその知識と技術力が生かせるんです。リノベーションの施工基準や性能の基準は、新築の基準を応用しているものが多いと思います。また、1つとして同じ状態がない築年数の経った家に対して、どこまでできるか、どうしたら問題が解決するかなどを見極めるカンも働きます。よく理解していなくて価格で攻めてくる施工会社さんは注意が必要だと思います。そういったことからも、これからより良いリノベーションを地域で行っていく上で、工務店ができることってまだまだあるなと感じています。
橋本 あと、「断熱改修してください」って工務店に来られる方はあまりいらっしゃいません。皆さん「家が寒いんです」「結露がすごいんです」と“困りごと”を相談してくださいます。その困りごとを解決するための提案が断熱改修というわけです。住まいに対する困りごとや心配ごとがあれば、何でも工務店に相談していただきたいですね。それをぶつけてもらえれば、解消できるさまざまな提案をさせてもらいます。
塩田 “提案をしながらお助けしていく”これが我々工務店の仕事だと思います。

 

[取材協力]旭ホームズ株式会社
モデルハウス 素の家

 

家の問題点が見つかったら 見て見ぬふりはできない。
株式会社大喜 代表取締役 柿田 勝司氏

 

住宅性能の向上は 工務店の得意とするところ。
旭ホームズ株式会社 営業課長 名藤 健治氏

 

お施主様の希望を汲み取った プランで差別化を図る。
旭ホームズ株式会社 代表取締役 末岡 京子氏

 

工務店はその状況に応じた 細かい提案ができる。
株式会社池芳工務店 代表取締役 池田 芳史氏

 

 

住まいの困りごとは 何でも相談してもらいたい。
橋本建設株式会社 代表取締役 橋本 英俊氏

 

工務店の提案で お施主様をお助けしていく。
しおた工務店 代表取締役 塩田 崇氏

 

座談会・編集後記

編集部:今回のテーマを語りつくしていただいた後に、しおた工務店の塩田社長がおっしゃっていた「工務店はね、お施主様の困りごとに対しては何でもやるんよ」という言葉が印象的だった。旭ホームズの末岡社長も「この前、1人暮らしをされているおばあちゃんから連絡があって、電球1つ取り替えに行かせてもらいました」と。
※もちろん、ここまで対応できるのはOB様(その工務店で家を建てた。もしくはリフォーム・リノベーションをしたお付き合いのあるお施主様)だから。そのお話からも、“家守り”として一生お付き合いをしていくという当たり前の覚悟を感じられた。家は日々経年変化していくもの。
大切なわが家を住み継いでいくために、中古物件を購入して安心して住むためにも、リノベーションを依頼するなら「家の困りごと」を気軽に相談できる地域工務店のような一生のパートナーとなる存在とつながることが大切だと感じた。

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