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森と地球環境を守り住まいに豊かさをもたらす 国産材でつくる木製ドア

大量生産大量消費から脱却し、社会のサステナビリティ(持続可能性)が重要視されるようになった今、 地域環境に負荷をかけず、住む人の心と体に優しい家づくりが求められている。
そんな中、創業当時から無垢材を使い、現在は国産の無垢材でドアを製造しているユダ木工株式会社は、 高断熱ドアの製造だけでなくメンテナンスやリフォーム、さらには端材をエネルギー源に生かすなど 循環型社会の構築を目指しながら人と地球環境に優しい企業活動を行っている。

 

国産材製の高断熱ドアで地域環境保護に寄与

「木を守り、生かし、生命の循環を守りたい」との思いから、木と暮らす心地良さが感じられる木製ドアの製造・開発を行っているユダ木工株式会社。
建具店として1924(大正13)年に創業し、今年で96年を迎える。建具業のかたわら、1980(昭和55)年当時では画期的な枠付きユニットドア「ヨーロピアンドア」を開発。全国に向けて高級木製ドアの販売を開始した。
ユダ木工が製造販売する木製玄関ドアは、国産材を使っていることと、高い断熱性能を備えていることが大きな特徴。この国産材ドアを開発するきっかけになったのは、2006(平成18)年に始まった「はつかいち漁民の森づくり」※活動だ。これは毎年地元で行われている植林や海の掃除活動で、この活動には「森・川・海の環境は繋がっており、地域の環境を守るためには山の手入れが不可欠」との考えが根底にある。そのために、活動に参画している地元工務店・永本建設では、「地域の山の木で家づくりをする」という取り組みを行っており、それまで外国産材でドアをつくっていたユダ木工はこの考えに共感し、「これからは地域の山の木でドアをつくりたい」と考えるようになった。
そして2011(平成23)年、時代に合う、木製ドアの新しい価値を追求した「ラスティック玄関ドア[2005(平成17)年]」を土台に、地域ヒノキ材を使った「MIYAMA桧玄関ドア」を商品化。従来のウレタン塗装から植物性自然塗料に切り替え、メンテナンスしながら住まう生活スタイルと、木材の経年変化を楽しむ「経年美」の価値観を提唱している。  また、ユダ木工では木材の高断熱性と住宅の温熱環境の重要性に着目し、高断熱木製玄関ドアの開発も進めてきた。木は本来、アルミの1700倍も熱を伝えにくい高断熱素材。2001(平成13)年に初めて断熱・気密性能データを外部機関で計測し、2018(平成30)年にはヨーロッパの基準に匹敵するUw値=0.82W㎡・Kの「超断熱ドア」を発表した。ユダ木工の木製ドアは、経年美とともにこうした確かな基本性能を併せ持っているのが大きな特徴だ。
環境保全やロングライフの観点からも、国産材を使った高性能ドアの開発・製造に会社の存在意義を感じている湯田氏。「自然素材に囲まれた生活を好む方々に、本物の木製ドアを通じて心地良い安らぎを提供したい」と、今後も独自の取り組みを続けていく。
※はつかいち漁民の森づくり…植林活動や海の掃除活動を通して廿日市の自然や環境について考える「広島西部ロハスの会」が毎年10月に行うイベント

 

ユダ木工株式会社 代表取締役 湯田 卓氏

 

長年改良を重ねた木製玄関ドアは、充実した調整機能で木の反りや歪みにも対応し、ドイツ製の高気密パッキンを採用するなど設計の工夫が詰まっている

 

機械による効率化を図りながらも 多くの工程が職人の手仕事によるもの

機械と職人の技の融合で 1本の丸太が木製ドアに

ユダ木工の木製ドアは、地元の木材市場で地域ヒノキ材を丸太で購入し、製材所でカットして皮まで全てユダ木工へ運び、自社で加工、組み立て、塗装して完成。工場の中はヒノキの香りが漂って心地良い。製材した板は桟積みし、蒸気式乾燥機で1週間かけて乾燥させた後、約1カ月間外気に馴染ませて含水率を安定させる。この乾燥工程により、加工後も狂いの少ない木材になる。そして、割れなど木の欠点を除去し、木目を見て適材適所の材料を切り出した後、職人と機械それぞれの技によってさまざまな加工を施し、ようやくドアが組み上がっていく。
ユダ木工が最も大切にしているのは手仕事だ。最新の高度な技術をもつ機械も活用するが、最後は職人が直接目で見て、触って仕上げていく。木材には必ず節があるが、ユダ木工ではこの節を欠点ではなく木の個性ととらえている。節の抜けた穴は職人がヒノキの枝を使って埋め、本物の節のように再生。手間のかかる仕事だが、こうすることでヒノキを無駄にせず、製品として生かすことができる。それと同時に、節は「木らしさ」を演出する味わいにもなっていく。
機械と職人もまた、木材の生かし方と同様に、適材適所でそれぞれの能力を発揮しているのだ。

 

ドアの表面は一枚ずつ木目に沿って丁寧に研磨していく。熟練した職人の手仕事が、塗装の仕上がりを大きく左右する

 

木材を組み合わせるときにできたわずかなすき間も、ヒノキの粉を原料としたパテを使ってきれいに処理

 

柔らかい布を使ってしみ込ませるように植物油ベースの含浸型塗料を塗り込む。2回の着色と仕上げの塗料を重ねる

 

高度な技術を備えたCNCマシンを使い、ドアの外周カットやロック、蝶番の加工が施されていく

 

持続可能な循環型社会を目指し 端材は粉砕してボイラー燃料に

植物由来の梱包材も地球に優しく再生可能

丸太を製材・加工する過程で出る端材。そのままだと廃棄物になってしまうが、持続可能な循環型社会の構築を目指すユダ木工ではこの端材までも有効活用している。
木材の含水率を約8%まで落とすために7〜10日間かけてゆっくりと機械乾燥するが、この乾燥機を運転するためのボイラーの燃料として端材を細かく粉砕したチップが使われる。こうして、仕入れた材木を余すことなく全て使い切ることも、環境保全における取り組みの一環だ。
製品を包装するための梱包材については、地球環境への配慮から発泡スチロールの緩衝材は段ボールに、石油由来のビニールはサトウキビ由来のバイオポリエチレンへとそれぞれ切り替えた。塗装に使う塗料も、石油由来のウレタン塗装から、植物油を主成分とした自然塗料のオスモカラーに切り替え、住む人に優しいものづくりを実践している。
ユダ木工は木製ドアの専門メーカーとしてトップを走るべく、これからも環境保全に高い意識を持ちつつ高性能のドアづくりを追求し続けていく。

 

地元の山から切り出された丸太が並ぶ材木市場。ここで買い付けた丸太が製材所で製材され、木の皮や端材もまるごと1本分ユダ木工へと送られる

 

木取りの過程で出る端材を短くカットした後、ベルトコンベアで運び入れて粉砕機にかけられる

 

端材を細かく粉砕してできたチップ。これを燃料にすることで、自然の恵みを余すことなく活用していく

 

チップを燃やして蒸気を発生させる木質バイオマスボイラー(右)と、木材を乾燥させる機械(左)。ボイラーで発生させた蒸気を木材乾燥機の熱源にする

 

木製ドアがしっくりくる家で育む 温もりある豊かな暮らし

自然塗料仕上げのドアは 施主によるメンテも可能

経年によって劣化した木製ドアを、取り替えるのではなく職人の手で修理して新しい命を吹き込むのも、持続可能な循環型社会を目指すユダ木工ならではの取り組み。約20年前はウレタン塗装が主流だったが、15年前から施主によるメンテナンスが可能な自然塗料に移行。ウレタン塗装の木製ドアについてはユダ木工が預かり、表面の傷んだ塗膜を研磨して除去し、塗装し直すことで新品同様に生まれ変わらせる。
こうして何年経っても施主のドアを見守る姿勢や、施主自らがメンテナンスをしながら経年変化を楽しんでもらう考え方は地域工務店と同じ。国産材を中心に使った家づくりで心豊かな暮らしを提案するという志向には、工務店と相通じるものがあるようだ。

 

長年紫外線などにさらされて劣化した木製ドア。表面の塗膜をきれいに除去してから再び塗装する

 

 

グレーのガルバリウムに 無垢材の玄関ドアが 優しく馴染む

 

断熱・採光・防犯性能を備える スリットガラスがアクセント 高品質で美しい佇まい

 

 

 

ユダ木工株式会社 https://www.yudawood.com

 

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