簡単に手に入り、安易においしいと感じる
食品に依存した生活を続けると、
健康を害することがあります。
その季節ごとに自然から生まれたものを、
古くから伝わる調理法で料理し、
家族で食べる……。
その当たり前の毎日が、
身体と心の健康につながるのです。
現代は、自然の中で育った食品を、古くから伝わる方法で調理し、家族団らんの中で食べるという、当たり前のことが難しくなってます。日本人の食を考える上で、今一度、こうした「食育」を考え直さなければなりません。
「食」を考える上で、3つの力(ポイント)が挙げられます。
1)選食力
2)共食力
3)環境と食料問題を考える力
です。
「選食」とは、栄養的に、また自分に何が必要な食べ物かを知る力。「共食」とは、団らんのなかで食事をし、コミュニケーションを図りながら食事を楽しむこと。「環境と食料問題を考える」とは、現在の世界に起こっている食料問題を知り、自然や食料を慈しみながら「もったいない」という感覚を養う力のことです。
この3つのポイントが欠けているために、日本人の身体に起こっているのがナトリウム(塩分)の過剰摂取です。日本人の食塩摂取量は1日平均13.5g(厚生労働省1997年調べ)と、欧米人に比べると多く、それを受けて厚生労働省は2015年4月に、成人の1日のナトリウム摂取量の目標を男性8.0g未満、女性7.0g未満としました。
加工食品や外食への依存、食卓の団らんの喪失などから、塩分の多い食事が増え高血圧症となり、脳梗塞、脳出血などの病気を引き起こします。住宅の中で起こる高齢者のヒートショックもこの高血圧が原因です。
赤ちゃんが離乳食を始めた頃、母親はなるべく薄味で、安心・安全な自然素材の食品を選び、栄養バランスを考えて与えていたと思います。それが次第に加工食品を始めとした味の濃い食べ物に慣らされ、「味の濃い食品がおいしい」という間違った味覚が育ってしまいます。家庭料理、高齢者料理にも、インスタント食品を用いた濃い味や栄養素の少ない食事が横行しているように感じます。
家庭の中で取り組めることとして、まず、天然だしをとることから始めてみましょう。始めは薄味に戸惑うかもしれませんが、何とも言えない味のやさしさ、奥深さを感じるようになると思います。この味を知れば塩分の強い食品に抵抗を感じるようになります。その食事を1日に1回でもいいので、なるべく家族2人以上で食べてみましょう。こうした食事から精神的にも味覚的にも豊かさが育ちます。
また塩の代わりにレモンやゆずで味を付けたり、塩分量の多い醤油や味噌の選択を考え直すことも必要。こうした工夫の中から日本の本来の食の素晴らしさに気付くはずです。
「食育」という言葉は、子どもたちに向けられた言葉ではありますが、家族の健康を預かる主婦や食に関わるすべての人に言えることです。減塩のためのちょっとした工夫や心がけが、日本人の健康を守るのです。
現在、昆布、カツオ、煮干しなどでだしをとる人は主婦の20~30%と言われています。インスタントのだしにはないおいしさ、栄養のためにも、天然だしを作る習慣をつけてみませんか。
天然素材でだしをとると素材そのものの味わいがあり、少しの塩分で味を付けることができます。もちろんミネラルやカルシウムなど栄養も豊富です。
また、とり終わったカツオや昆布、煮干しは佃煮やふりかけにも加工できることもポイント。家族の健康に役立ち、料理もグンとおいしくなる天然だしを見直してみましょう。
外食やインスタント食品が多い人は、ミネラル不足になりがちです。ミネラルが不足するとめまい、記憶障害、骨粗鬆症、心臓疾患、腎臓疾患などの症状になります。